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‘盛り土’問題によせて [から騒ぎ]

静岡県熱海市伊豆山土石流は、7月3日、逢初(あいぞめ)川の上流域の山の斜面で発生、砂防ダムを乗り越え、全長約2kmに及んだ。下流では幅100m以上となって住宅約120棟を飲み込む惨事となった。7月15日現在で死者12名、行方不明者16名となっている。

土石流は近年の気候変動に伴う大量降雨によって惹き起こされた激甚な自然災害である…最初はそう思ってテレビを見ていたが、どうやら土石流の大半は‘盛り土’であることが分かってきた。大量降雨という自然の猛威が発端ではあるが、人為的になされた‘盛り土’が大量の水分をため込んだ末、物理的に崩壊・流出したということだ。すなわち人災の要素を持っているということだ。※註1

※註1 今回のような谷筋の‘盛り土’についてはウィキペディアに適切な解説があったので、ここに転載しておきます。「谷筋、沢を埋めるように盛土を行なった場合には、表面上の見た目はなだらかに平坦状となったとしても、元来の水筋はその地下に残存し、地中の水として存在し流れる。大雨などにより、その地中水量および水圧が増し、盛土を崩壊させる場合がある。さらに下流に向かう土石流となる場合もある。斜面の傾斜に応じて、水防ダムおよび水抜きを設けて危険を防止する必要がある。」

土石流の起点となった‘盛り土’現場にダンプカーが登っていく様子は、住民にもたびたび目撃されていた。崩れないだろうか?大丈夫だろうか?と日ごろから思われていたようだ。この件に関し、住民から市議会議員への陳情もあったようだ。

最初の報道では崩壊‘盛り土’現場付近にあるメガソーラーに疑惑の目が向けられたが、メガソーラー設置者(=現在の土地所有者)は、‘盛り土’の事実を知らなかった旨を主張。逆に瑕疵物件を売った旧所有者への法的措置も検討中だという。

それで旧所有者はどうかというと小田原市にあった不動産管理会社で、すでに清算した法人だという。この会社は2009年に‘盛り土’の計画を熱海市に届け出て、実際に造成を行っている。ただ、‘盛り土’にガラ(建設廃材、コンクリート片、木切れetc)(=産業廃棄物)を混入していたため、市から是正指導を受けていた。また静岡県の調査によると、‘盛り土’は崩壊時点では、2019年の届け出時の15mをはるかに超える50mの高さに達していた模様だ。

これらの状況から考えると、この会社は登記上は不動産管理会社となっているが、実態としてはもぐりの産業廃棄物収集・運搬・投棄を主たる業務としていたと推察できる。それで、法律の不備を突いて‘盛り土’と称して、収集したいろんな廃棄物をこの地に捨てまくっていた。※註2 ひょっとしたら、あとは野となれ山となれで、計画的に会社を清算したのかもしれない。行政指導を受けた場合は、申し訳程度に従ってやりすごす。一方で時に威力を行使する...行政サイドからみても厄介な事業者であった可能性もありそうだ。

※註2 宅地造成等規制法では、がけ崩れまたは土砂の流出を生ずるおそれが著しい市街地等を『宅地造成工事規制区域』と指定して、区域内の造成工事が安全に施行されるよう許認可制度を設けている。しかし今回の土地は当該市街地等には当たらないため、ただの届け出だけで、容易にもぐり処分場として出来上がってしまったということだろう。

いろいろな問題点もあり、まだミステリーな部分もある事件である。すでに‘盛り土’事業者が法人としてはなくなってしまい、指導しようにも指導できない状況もあった。ただ私が残念だと思うのは、住民が‘盛り土’の危険性を感じていながら、時に危険だという声もあげていながら、これに対し、行政が有効な手立てを打てなかったこと、「住民の命を護る」ことが結果としてできなかったことである。状況から考えると、行政の予算を割いて‘盛り土’の危険を除去するしかないところにきていたと思う。





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