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TPPでバターはどうなる!? [から騒ぎ]

TPP(環太平洋経済連携協定)は大筋合意に達したと言う。

合意内容は日本国民にとって評価できるものなのか否か?

今回は私の大好きな「バター」を取り上げ、「TPPでバターはどうなる!?」の観点から、合意内容を考えてみることにする。

【乳製品】に関するTPP合意まとめ
・現行の国家貿易制度を維持する。
・バターと脱脂粉乳の優遇輸入枠を新設する。
・優遇輸入枠は発効当初は生乳換算で6万トン、6年目以降は7万トンとする。

産経BIZ 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の要旨参照


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バター好きな私としては、昨今のバターの品薄状態は大いに不満、かつどうして先進国・日本でバターが不足するのか?スーパーの陳列を見ても牛乳が品薄の様子もないし、チーズは普通にあるのに・・・、天候などの外部要因で製造に支障をきたすものでもなかろうに・・・「品切れ中」とか「お一人様1個限り」とか、とにかく納得がいかない。

バター不足については、こんな事情が語られている。

「(バターの)慢性的な不足の背景には、酪農家の減少とバター特有の‘役割’が影響している。(中略) ‘ガラス細工’。農水省はそんな言葉を使って、最近の慢性的なバター不足の原因を説明する。

不足の最大の理由は、酪農家と乳牛が減り、原料となる生乳(せいにゅう)の生産量が減ったからだ。2014年度の生産量は約733万トンで、ピークだった1996年度の約866万トンから約15%減。国内では牛乳と乳製品を作るには年間約1200万トンの生乳が必要で、国産だけでは足りない。

保存がきかない生乳は、品薄になると消費者が最も困る牛乳に最優先で使われる。次に値段が高い生クリーム、長期保存しにくいチーズ。バターや脱脂粉乳は需要の2、3カ月分の在庫があるのが理想だが、余りで作られるため生乳不足の影響を真っ先に受ける。

‘需給の調整弁’のバターは、生乳の廃棄や品薄を防ぐ役目も担う。生乳が余るなら生産が増え、足りなければ減らされる。民間が自由に輸入できない国家貿易の対象でもある。国内酪農家を守るため、高い関税と引き換えに一定量を輸入。不足すれば追加輸入するが、生乳の需給バランスは天候や乳牛の体調に左右され、見極めが難しい。『ガラス細工を扱うようだ』と言われるゆえんだ。」
(引用⇒朝日新聞デジタル2015年6月8日バター、今年も品薄 自由に輸入できない需給のからくり)

農水省は国内生産者(=一次産業)保護がレーゾンデートル。
生産者が望むか望まないか、消費者が望むか望まないかとは無関係に、とにかく国内生産者を守るという大義で仕事をしている。その仕事自体が自己目的化している。

バターに関しては、国内酪農家保護を旨としてガチガチの国家貿易制度をしいている。農水省は輸入バターの国内市場へのアクセスを制限する一方、傘下の外郭団体、独立行政法人農畜産業振興機構(alic=エーリック)を通じて、国内の需給関係のコントロールを図ってきた。

エーリックは国内酪農家が供給する生乳を自らの裁量で、自らが計画して「牛乳」、「生クリーム」、「チーズ」、「バター」といった用途に割り振ってきた。それが、最近では酪農家と乳牛の減少トレンド、あるいは気象変動の影響による生乳不足などによって、乳製品の国内需要にうまく対応させることができなくなってしまった。そのしわ寄せが《生乳の需要の調整弁》の役割を担わされた「バター」ににきて、スーパーでの品薄、高値となって現象した。それで消費者が不利益を被っている。

・・・これがコトの顛末である。

農水省関係者は「ガラス細工の扱いは私たちには無理でした」と素直に反省し、バターの需給管理を、ある程度市場原理に委ねられるようにするべきである。


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で、今回のTPP合意である。

【乳製品】に関するTPP合意を再度掲げる。
・現行の国家貿易制度を維持する。
・バターと脱脂粉乳の優遇輸入枠を新設する。
・優遇輸入枠は発効当初は生乳換算で6万トン、6年目以降は7万トンとする。

乳製品に関して、国家貿易制度の維持、すなわち関税や輸入数量制限といったかたちで、これからも国家が輸入品を管理してゆくことを認めさせた。これは少なくとも「国内酪農家保護」の大義がある農水省にとっては戦果であろう。

優遇輸入枠が新設されたことは、上述の役人の「国内生乳の運用計画の拙さ」をカバーするものであり、わが日本国住民の消費者利益には適う方向性である。

ただバターの国内需要量は生乳換算約200万トン(出典:農林水産省生産局畜産部「牛乳・乳製品及び牛肉の貿易の状況」平成16年7月)と推定すると、優遇輸入枠が発効時6万トン、6年目以降7万トンという割当数量は国内需要量の3%台の比率でしかない。

はたしてこの程度の輸入数量で「国内生乳の運用計画の拙さ」をカバーしきれるものか?・・・今後も気をつけて見てゆきたい。

もう一点、優遇輸入枠の関税率が何%なのかがこの報道内容だけではわからない。またエーリックが従来輸入業者に課してきた「マークアップ」というエーリックへの納付金がどうなっているのか?このあたりも今後は注視してゆきたい。

TPPに関しては識者がメリット・デメリット様々に喧伝しているが、各合意内容について個別・具体的に吟味する必要があると感じている。

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