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原発の本当のコスト-原発ってそういうものだったのか会議② [電力論]

資源エネルギー庁が公表しているわが国の電源別の発電コストは以下の通りである。

・火力発電:7~8円/kWh(※LNGの場合)
・水力発電:8~13円/kWh(※小規模発電を除く)
・原子力発電:5~6円/kWh
・風力発電:10~14円/kWh(※大規模発電の場合)
・地熱発電:8~22円/kWh
・太陽光発電:49円/kWh

【出所】
水力・火力・原子力発電:総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会
(2004年1月)
風力発電:総合資源エネルギー調査会第7回新エネルギー部会(2001年6月)
地熱発電:地熱発電に関する研究会(2009年6月)
太陽光発電:太陽光発電協会のデータより資源エネルギー庁試算(2001年6月)

これを見るとわが国では原子力発電は最もコストのかからない電源ということになる。

一方、立命館大学の大島堅一教授(環境経済学)は国の発表している原子力発電のコストに疑問を持ち、1970年以降の電力会社の有価証券報告書や国の予算書などから独自に原子力発電のコスト試算を行った。大島教授によると国のコスト試算で考慮されていないコストがあると言う。

1.揚水発電のコスト:
原子力発電は出力調整が難しいため、夜間の電力が余ってしまう。そこで夜間の余剰電力を使ってポンプを動かし、水を汲み上げ、昼間にこれを流して水力発電する、いわゆる「揚水発電」という電力需給調整の仕組みがセットになっているが、この揚水発電のコストが入っていないと言う。

2.使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理コスト:
原子力発電に伴って発生する使用済み核燃料は、その半分を青森県・六ヶ所村の再処理工場で処理することになっていて、この処理コスト19兆円は試算に入っているが、残りの処理方法未定分の処理コストが考慮されていないと言う。同様に放射性廃棄物の処分コスト、廃炉のコストも原子力発電に付随して発生するバックエンド費用として考慮しなければならないが、これらが過小に見積もられていると言う。

3.補助金のコスト:
日本国は一般会計のエネルギー対策費、電源開発促進対策特別会計(電源立地勘定+電源利用勘定)(→2007年度からはエネルギー対策特別会計に引き継がれる)をあわせ、エネルギー事業関連の国家予算を持っている。大島教授は電源別に財政支出の割合を推計して、原子力発電向けに大きな割合で財政支出が行われていることを明らかにした上、この財政支出が発電のコストとして考慮されていないことを指摘する。

【コメント】
わが国の原子力関連の年間国家予算はおよそ4000億円にのぼる。わが国はこの国家予算を各種補助金としてばら撒き、原発の立地エリアを確保し、地域の公共施設やインフラを整備し、地域住民を懐柔し、あるいは核燃料サイクルなど原子力利用技術の研究助成を行いetc.といった具合に、「お金」の力をテコとして原子力政策を推し進めてゆく仕組みができている。「原子力は国策」と言われる所以である。

この「お金」は電力会社から見れば外からやってきた補助金のため、コストという認識が生じにくいが、国民(=利用者)から見れば明らかにコストである。なぜなら補助金の原資は国民からのピンハネ金、あるいは未来の国民からのピンハネ金だからである。[ちなみに国家エネルギー対策特別会計(旧電源開発促進特別会計)は私たちの電気料金に0.375円/kWh(2007年4月~施行税率)の割合で賦課される電源開発促進税を直接の財源としている。] (青木)

4.事故に伴う被害コストと被害補償コスト:
「直接的事故対応」「電力事業者の経済的損失」「被害対応」と事故が起きた時の費用は莫大で、事業の継続自体が困難になるものだと大島教授は指摘する。

【コメント】
この度の福島第一原発の深刻な事故で明らかになったこと、それはひとたび事故が起きると、関連して様々な被害が出てきて、被害のコスト、また被害の補償のためのコストが計り知れないほど増大するということだ。
原子炉の冷却、放射能汚染水の処理、緊急臨時の電源確保、放射能瓦礫の除染と撤去etc.…といった事故収束のコストにはじまり、原発周辺住民の財産(土地・建物・家財道具・家畜・生産品etc.)に関わる放射能汚染被害、子孫にまで及ぶかも知れない放射能汚染による健康被害などの補償コスト、さらには放射能汚染から二次的に惹き起こされる様々な被害(風評被害、避難対象地域での窃盗被害、疎開先の不自由な生活からくる病気やストレス被害etc.…)の補償コスト、原子力行政のコスト(ストレステスト実施や新しい安全基準の導入etc.)とトータルのコストは極めて甚大である。

以上のコストをトータルで見てみると原子力発電の発電コストは安いとは言えないだろう。
また原子力発電事業は一民間会社が担える以上のリスクを持っていると考えるべきだろう。(青木)

大島教授は1~3までのコストを考慮した試算を行い、2000年代の原子力発電の発電コストを8.93円/kWh、揚水発電とのセットでのコストを10.11円/kWhと発表している。原子力発電の低コスト神話が崩れ去ってしまう数値である。

参考URL1 原発の本当のコスト(大島堅一立命館大学教授のレジュメ)

参考URL2 立命大・大島教授「採算取れない電源」 原発政策、コスト面で指摘
         (毎日新聞地方版2011年7月21日)

大島教授は価値があるいい調査をしてくれました。感謝いたします。



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