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株主として何ができるか?-“脱原発”都政への提言② [私の提言]

今回の都知事選で“脱原発”候補は、東京都が東京電力の株主であることを足場として“脱原発”の方向性を打ち出すことを目指した。現実問題として、このようなことは可能なのか?

まず、現在の東京電力がどういう会社なのか?株主構成から見てみよう。

・原子力損害賠償支援機構 1,940,000,000株(54.69%)
・東京電力従業員持株会     47,306,000株(1.33%)
・クレディ・スイス・セキュリティーズ(ユーエスエー)エルエルシー
エスピーシーエル.フォー イーエックスシーエル.ビーイーエヌ  43,727,000株(1.23%)
・東京都 42,676,000株(1.20%)
・三井住友銀行 35,927,000株(1.01%)
・日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 29,222,000株(0.82%)
・日本生命保険相互会社 26,400,000株(0.74%)
・みずほ銀行 23,791,000株(0.67%)
・日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 18,836,000株(0.53%)
・日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口1) 15,252,000株(0.43%)
・その他  1,323,880,531株(37.3%)
・発行済株式総数 3,547,017,531株(100%)

→参考資料 株式等の状況 東京電力HP 2013年9月30日現在

原子力損害賠償支援機構が株式の過半を保有する筆頭株主であることがわかる。
東京都は4番目に株式数を保有する大株主ではあるが、保有比率は1.2%に過ぎない。

ここで原子力損害賠償支援機構が筆頭株主になった経緯を振り返ろう。

民主党政権下、「原発事故の一義的責任は東京電力にあり」とされ、東京電力には事故被害の補償、事故発電所の廃止、電力の安定供給という電気事業者としての責務を全うすることが求められた。その過程で資金不足が見込まれるならば、国が手当てをしましょうという筋で、原子力損害賠償支援機構が設立された。実際には2012年7月に国が承認した特別事業計画に基づいて、第三者割当増資がなされた。機構(=日本国)が種類株式を引き受けることで、機構(=日本国)が54.69%の株式を保有する筆頭株主となった。

原発事故処理の目処がついて、自律的に事業運営ができるようになるまでは、国が特別事業計画に沿って、電力会社を管理し、必要なファイナンスを実行していくというスキームができたわけだ。このスキームは自民党政権になっても継続している。

さてここで、東京都が株主としての支配権を確立しようと、東京電力の株式公開買い付けを行ったと仮定しよう。
首尾よく100%の買い取りに成功したとしても取得株式数1,607,017,531株は(発行済株式総数-機構保有株式数)で45.3%と過半数に至らない。機構(=日本国)が依然最大株主として君臨している。機構(=日本国)は事業運営を安定化させることを目的として株式を保有しているのであって、現時点で保有株式を売却することはありえない。

また機構(=日本国)が引き受けた種類株式は正確には2種類あり、A種は議決権つき、B種はいざという時に議決権が付与される株式となっている。この仕組みにより、機構(=日本国)出資時点で、機構(=日本国)が1/2以上の議決権を取得し、B種株式のオプションにより潜在的に2/3超の議決権の取得が可能になっている。

また機構(=日本国)と東京電力との株式引受契約においては、東京電力に対する機構(=日本国)の支配権を絶対にするために、細目が取り決められている。たとえば、株式の発行や処分、資本金の変更、組織再編、「機構の議決権割合や持株割合を希釈化させる蓋然性のある行為」、株主総会の召集、総会議案の内容の決定、取締役会規程その他重要な社内規程の変更や廃止etc.・・・といった事柄は機構の承諾や機構との事前協議が義務づけられている。微に入り細に入る取り決めになっているのだ。

→参考資料 第三者割当による優先株式発行に関するお知らせ 東京電力HP

以上から、現時点で東京都が株式を買い集めていっても、東京電力の事業運営の主導権を持つにいたることは難しいと言えるだろう。



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