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会議は踊るよ、どこまでも [統治論]

大震災という国難に際しては、時の内閣はトップダウンの意志決定を的確かつ迅速に行って、それが現場の災害対応にスムーズに流れてゆくピラミッド型の組織を編制する必要に迫られる。なぜなら大震災により秩序ある国民生活が一挙に打ち壊されるために、被災者救助、避難所開設、物資の供給、輸送路や燃料の確保、避難誘導指示、緊急医療受入対応、安否確認、電力の供給、ガスや水道の供給、通信網の安定化、デマ・風評被害対応、諸外国への情報発信と支援要請、金融システムの安定化、原発事故対応etc.といった数えきれない課題が一挙に押し寄せてくるからである。

これらの課題に的確かつ迅速に対応するには、「責任ある他人」(=時の内閣)の「指示・命令」(=意志)を忠実に受け取って、その「指示・命令」(=意志)に自分を服従させて行動することが重要であり、そのための組織編制が社会的動物たるわが「人間」にとって必須となるのである。

いざ生命の危機に際して、人間以外の動物は「脱兎のごとく」逃げ出したり、あるいは逆に「窮鼠かえって猫を噛む」で、自分や自分の子どもを守る行動に出たりするかもしれない。しかるにわが「人間」は危機に際して、これらの動物とは明らかに違う行動がとれる。他人の意志を受け取って、その意志に従う形で行動することができる。
これは人間社会全体を見通した分別ある行動で、人間自身も持っている動物レベルの生存要求と、ひとりの人間の中で不思議なことにも共存している。そうであるから、国家統治の責任者から「指示・命令」を受け取った自衛隊員は津波の被災地にあかの他人の救助に向かうし、高濃度の放射能が放出される福島原発に自らの被爆の危険を顧みずに放水に向かう。

話を戻そう。
今回の大震災は戦争に匹敵する国難である。そうであれば、わが「日本国」も国家統治者である時の内閣を頂点として指揮命令系統の整ったピラミッド型の組織を速やかに編制しなければならない。そしてこの組織で、次々と押し寄せる国民生活上の問題に対処しなければならない。この組織はよく出来た軍隊のように「責任のある他人」の「指示・命令」を忠実に受け取って行動を起こし、その結果について的確かつ迅速に「責任ある他人」に報告して次なる「指示・命令」を待つのだ。

現時点で菅・民主党内閣の災害対策の組織編制がどのようになっているか?インターネットから確認できる報道に基づいて内容を整理してみる。

1.東北地方太平洋沖地震緊急対策本部(3月11日設置、本部長:菅内閣総理大臣)
3月20日の本部会議では以下の下部組織(会議体)が設置された。
a.被災地の復旧に関する検討会議(座長:平野内閣府副大臣)
b.災害廃棄物の処理等に係る法的問題に関する検討会議(座長:小川法務副大臣)
c.災害廃棄物の処理等の円滑化に関する検討・推進会議(座長:樋高環境大臣政務官)
d.被災者等就労支援・雇用創出推進会議(座長:小宮山厚生労働副大臣)
e.被災者向けの住宅供給の促進等に関する検討会議(座長:池口国土交通副大臣)

2.原子力災害対策本部(3月11日設置、本部長:菅内閣総理大臣)
原子力災害対策特別措置法の第15条(緊急事態判断基準)規定に基づき、内閣府に設置された。

3.福島原発事故対策統合連絡本部(3月15日設置、本部長:菅内閣総理大臣)
福島原発の時々刻々変化する事故状況に適切に対応し、国民に対し正確な情報を迅速に伝える必要性から緊急に設置された。政府と東京電力が一体的に情報を受け取り、判断し、指示を出せるようにすることを重視して場所を一体化したのが特長。報道によると3月12日の1号機の水素爆発の報告が遅れたことに激怒した菅総理の強い意向により設置された経緯があるようだ。

4.電力需給緊急対策本部(3月13日設置、本部長:枝野内閣官房長官)
電力の供給不足が発生す可能性が高いことから設置された。関連して蓮舫行政刷新担当相が節電啓発担当相に就任。

5.震災ボランティア連携室(3月16日設置、室長:湯浅内閣参与)
内閣府に設置された。被災者を支援するNPO法人などとの連携窓口となり、省庁間を調整してボランティア活動を推進する役割を担う。関連して辻本清美議員がボランティア担当の首相補佐官に就任。

6.党東北地方太平洋沖地震対策本部(3月12日設置、本部長:岡田幹事長)
民主党内で主に被災者支援を議論する会議体。

7.東北地方太平洋沖地震災害復旧・復興検討委員会(3月23日設置、座長:岡田幹事長)
民主党内で震災復興を議論する会議体。委員会の中で特別立法、歳出見直し、復興ビジョン、補正予算の四つの検討チームの部会も設置し、復興の方向付けを政権与党の立場で行う。

8.地震対策に関する政府・民主党連絡会議(3月15日1回目会合)
政府と民主党の意見交換の会議体。

9.各党・政府震災対策合同会議(3月16日1回目会合)
各党と政府の意見交換の会議体。

10.復興構想会議(4月11日設置が閣議決定、議長:五百旗頭防衛大学校長)
東日本大震災からの復興計画を議論し、政府の復興基本方針の基になる提言を6月末をめどにまとめることが求められる。議長には阪神大震災の復興にも携わった五百旗頭真防衛大学校長が就任、議長代理には建築家の安藤忠雄氏と御厨貴東大教授が就任する。15名の委員には被災自治体の村井宮城県知事、達増岩手県知事、佐藤福島県知事も入り、特別顧問には哲学者の梅原猛氏が就く。必要に応じ、国土開発や住宅対策など個別テーマごとに部会を開いて議論を進める。
政府は復興指針の実施機関として「復興対策本部」(仮称)設置を検討中。首相が本部長を務め、復興担当相も任命する。政府は対策本部設置を盛り込んだ復興基本法案を4月内にも国会に提出し、復興体制の整備を急ぐ。基本法案では復興構想会議の法的な位置付けも明確にする。

11.福島原発事故経済被害対応本部(4月11日設置が決定、本部長:海江田経済産業大臣)
東京電力福島第一原発および福島第二原発の事故による被害への補償問題に取り組むために、原子力災害対策本部で設置が決定した。本部長は新設される原子力経済被害担当相が担う。担当相には原発を所管する経済産業大臣が兼任する。


解決すべき課題の多さと緊急度を反映して、たくさんの対策本部と会議体が組織された。緊急対応のため、閣議決定で設置され、法的根拠が明確でない形の組織も多い。


よくも悪くも人材寄せ集め政党であった民主党が時の政権運営にあたっていたため、サークル的、話し合い参加的な体質を引きずっているのではないか?会議こそ多いが、実のところは「会議は踊る、されど進まず」ではないのか?軍隊型の上意下達の組織としては機能していないのではないか?また菅総理が「政治主導」にこだわって独自色を打ち出そうとするあまり、従来の官僚組織をスポイルし、結果として人心が離れていってしまってるのではないか?

外野席からテレビやインターネット報道を通して見ている印象である。


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